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[インタビュー]3人だからこそ作れた“誰かの声を聞く”ゲーム。開発陣に聞く「シュレディンガーズ・コール」完成までの4年間
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印刷2026/05/26 12:00

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[インタビュー]3人だからこそ作れた“誰かの声を聞く”ゲーム。開発陣に聞く「シュレディンガーズ・コール」完成までの4年間

番外編のようでかなり大事(?)
“インディーゲームを海外に届ける”話と
“ゲームをどう多くの人に知ってもらうか”の話

 1ページ目では,「シュレディンガーズ・コール」がどのように生まれ,どんな4年間を経て完成に至ったのかを中心にお届けした。
 実は今回のインタビューでは,挨拶もそこそこに,入交氏が参加してきたブラジル・サンパウロのgamescom latam 2026の話で盛り上がり,そのまま20分ほど話し込んでいた。

 「シュレディンガーズ・コール」そのものの制作話からは少し外れるようにも見えるが,いちインディーゲーム開発者,そして小さなスタジオが海外でどう見られ,どう自分たちの作品を届けていくのかという意味では,かなり興味深い話でもあった。

 そこで2ページ目では,番外編のようでいて本編にもつながる,海外での手応えの話,自分たちの作品の伝え方についての話をお届けしよう。

画像ギャラリー No.041のサムネイル画像 / [インタビュー]3人だからこそ作れた“誰かの声を聞く”ゲーム。開発陣に聞く「シュレディンガーズ・コール」完成までの4年間

4Gamer:
 入交さんは先日までブラジル・サンパウロのgamescom latam 2026に参加されていましたよね。
 SNSでの発信も見ていましたし,「現地で入交さんに会ったよ」っていう話を奥谷さん(4Gamer海外特派員のジャーナリスト・奥谷海人氏)からも聞いていて。入交さんは現地でもいろいろ交流されて,個人のXでもかなり積極的に海外向けの発信をされていますよね。

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入交氏:
 いや,全然ですよ。英語がペラペラなわけではないですし,SNSは翻訳ツールがありますから。
 現地では受け答えの例文をがっつり用意していました。

林氏:
 でも海外の学校に行っていたんだよね?

入交氏:
 はい,映画学校です。でもそのときだって英語は全然で。卒業制作では本当はゾンビ映画を作りたかったんですけど,英語で現場を回せなくて。そこから引きこもり。でも日本にはまだ帰りたくないって,ひとりでアニメーションを作ってました。
 そこから物価の安い国で暮らしながら,ひたすらコンペに出しまくるという。

4Gamer:
 でもそういう経験があるとないとでは,海外での動きってぜんぜん違うと思いますよ。

入交氏:
 それでいうと,コンペに出しまくっていたことはつながっているかもしれないです。

 作ったアニメの評判がよくて「これYouTubeにアップします」と先生に言ったら怒られたんですよ。「それは違う」と。
 話を聞いたら,作品は作ってすぐに公開するものではない。映画祭に出したり,プロモーションしたりする期間があるんだと教えられました。

4Gamer:
 それで見せる場所に作品を出し始めた。

入交氏:
 そうです。で,この話をブラジルで奥谷さんにしたら「ゲームも似ているよ」と言われたんです。
 できた作品や作っているものをもってこういうイベントに参加して,メーカーや業界関係者,ジャーナリストに会って紹介するんだと。それがアニメ制作のときの経験ともつながって。

林氏:
 クリエイターが直接海外に行って,自分で話せるのってすごくいいことだよね。
 日本では日本語でコミュニケーションを取る環境にずっといるから,海外でやりとりする機会がそんなに多いわけではない。だから,しんどいとは思うんですけど,それをやれるのはすごいなと。

入交氏:
 しんどいですけど,そこも集英社ゲームズに助けられたところがあって。
 集英社ゲームズの皆さんって,広報にもローカライズにもいろいろな言語に強い人いるじゃないですか。だから国や地域によって,SNSとかで「こういう言い方は大丈夫?」っていうのを聞けるんですよ。

4Gamer:
 それは心強いですね。
 ブラジルってなかなか行く機会ないですけど,ブラジルでの反応を見て,意識が変わったことはありましたか?

入交氏:
 ブラジル自体が市場という意味でも大きいんですが,それだけではなく,欧米とのつながりも強いと感じましたね。
 ブラジルのクリエイターもヨーロッパやアメリカのデベロッパ,パブリッシャとつながっていますし,ジャーナリストもたくさん来ていて。

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4Gamer:
 そこでいろいろな国と地域のコネクションができる。

入交氏:
 そうですね。一方で,日本のゲームとして認識ってどうなのかというと,やっぱり任天堂やカプコンのような大きなメーカーの名前がまず出てくるんです。
 日本のゲームやアニメが好きだと言ってくれる人は多いけれど,そこで“日本のインディー”の話が出てくるかというとそうではない。日本の人はそもそもあまり来てないというのもあるけど,アピールする場所にいないんですよね。

4Gamer:
 たとえばBIG Festival Awardsにノミネートされ,海外でも高く評価されている「Öoo」も,「日本のクリエイターが作ったから」ではなく,ゲームの仕組みやゲームデザインそのもので評価されていますよね。それは本当にすごいことで。

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 ブラジル・サンパウロで開催中のgamescom latam 2026の会期初日,同イベントに統合される形で名を残しているBIG Festival Awardsの授賞式が執り行われ,「Clair Obscur: Expedition 33」が既定路線ともいえる大賞を受賞した。ノミネート作品の中には日本生まれの「シュレディンガーズ・コール」と「Öoo」が含まれ,国際的な強豪タイトルと主要賞を競う形になっていたが,総じてラテン色の濃い,興味深い選出だったと言えそうだ。

[2026/05/01 11:45]

 ただ一方で,インディーゲームって,その作品がどこから生まれたのか,どんな地域性や文化の中から出てきたのかも,面白さのひとつだと思うんです。
 そう考えると,gamescom latamでノミネートされた2作品や,海外のアワードで多くの賞を受賞しているyonaさんの「ダレカレ」のような作品が続けて出てきているのは,すごく大きいと思うんです。この流れが,海外から見た“日本のインディー”の印象を少しずつ広げていくきっかけになるんじゃないかなと。

 実際,現地での反応ってどうだったんですか?
 
入交氏:
 とても評価していただけたので,すごくうれしかったです。
 アワードで僕たちのゲームを強く推してくれたのが,Brazil Games Export Programのパトリシア・サトウさんで。「どこで決めたんですか?」と聞いたら,まず見た目で即決めましたと。

Achabox氏:
 うわあ,それはすごくうれしいなあ。

入交氏:
 そこから実際にプレイして,ストーリーも印象深かったからって。
 中国や欧米などを見ていても,こういうアートや雰囲気をまず無条件にいいと言ってくれる人はかなり多いんです。まずアート,音楽,泣ける。この3つで届く。
 日本だと,もう少し踏み込んで「実際どういうゲームなのか」をちゃんと言わないと届きにくいところがある気がします。そこは違いとして感じます。

画像ギャラリー No.045のサムネイル画像 / [インタビュー]3人だからこそ作れた“誰かの声を聞く”ゲーム。開発陣に聞く「シュレディンガーズ・コール」完成までの4年間

4Gamer:
 まさにそこも聞きたかったことで,「シュレディンガーズ・コール」って「プレイしてほしい」と伝えるのが難しいゲームだと思うんです。

 システムを説明しても魅力の核心には届かないし,大事なところはストーリーや見せ方にあるけど,それがネタバレになるし人それぞれにある初見の感覚を失くしてしまうかもしれない。
 だから勧め方としては「雰囲気でいいなと思ったら,ぜひプレイしてね」しかない! って正直思っていて。

林氏:
 そうなんです。僕らも難しいなって話しているところで。で,何よりもプレイしてもらったほうが早いと。
 それで体験版では第1章を丸ごと遊んでもらえるようにしたんです。出しすぎではないかと言われたこともありますが,1話を最後までやってもらったほうがいいんですよ。

 だから4Gamerさんでも「まず体験版をやってみて」を強調してほしいですよ(笑)。お願いします。

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 集英社ゲームズは本日,PC用ソフト「シュレディンガーズ・コール」新たな体験版をSteamで公開した。本作は,人とつながることの痛みと救いを,絵本をめくるように体験できるノベルアドベンチャーゲームだ。今回の体験版は,第1章の終わりまでプレイできる。

[2026/02/10 13:17]

4Gamer:
 すごく分かります。ボールドで強調します。

 イベントでの試遊だと,だいたい20分くらいで遊べるものですよね。雰囲気は伝わるけれど,そこで「ゲームとしてこの先は?」となった人をもう一歩進ませるのは難しいなと思いました。

Achabox氏:
 イベントに体験版を出したときも,メディアの方から「どう書けばいいか分からない」と言われることがありました。

 言葉を絞り出すのがすごく難しいゲームなんだと思います。どう例えればいいのか。自分たちの周りでも近いものを探していたんですが,ゲームで考えるとなかなか見つからなくて。
 最近は「大人が読める絵本」みたいな言葉を少しキーワードにしています。それでも,全部を説明できる言葉ではないんですよね。

写真は2024年開催「BitSummit Drift」
画像ギャラリー No.046のサムネイル画像 / [インタビュー]3人だからこそ作れた“誰かの声を聞く”ゲーム。開発陣に聞く「シュレディンガーズ・コール」完成までの4年間

4Gamer:
 「童話のような」とか「絵本のような」という言い方はありますよね。

 でも,それだけだと「それはゲームなの?」となってしまう。その先を説明しようとすると,プレイしたときの感触や,その人の中に残るものの話をしなきゃいけない。言えるけど言い切れない,みたいな難しさがあります。

入交氏:
 そうなんですよ。だから集英社ゲームズさんが絵本みたいな表現でプロモーションしてくれたけど,それの反応がいいのは国内ではなく海外だったりして。

4Gamer:
 ああ。さっきの話ですが,まずは雰囲気でとらえて興味を持ってくれるという。

画像ギャラリー No.047のサムネイル画像 / [インタビュー]3人だからこそ作れた“誰かの声を聞く”ゲーム。開発陣に聞く「シュレディンガーズ・コール」完成までの4年間

入交氏:
 ストーリーに全振りした作品って,最近増えていると思うんです。そういうゲームをみんなどうプロモーションしているんだろうと考えることはありますね。
 説明しやすくするために,近いタイトルを出すこともできるじゃないですか。分かりやすいけど,それもちょっと違う。

4Gamer:
 「○○×○○」みたいな,既存タイトルやジャンルを交えた表現は使ってしまいますね。
 メディアの場合,ニュースとして分かりやすく伝えられるけど,でもそれがそのタイトルとちゃんと向き合った紹介なのかというと違う。インディーゲームの独立した表現や作家性に向き合う発信をと思うと,既存の枠に当てはめてしまうのはどうなのかとなります。

Achabox氏:
 私たちも分かりやすさのためにそういう表現を使うことはあります。
 でも,「うーん,でも,そのゲームとは違うしなあ」とも思うんです。

4Gamer:
 まず興味を持ってもらうための言葉と,作品そのものを丁寧に伝える言葉は同じではないですよね。

 これはインディーゲームに限らずですが,紹介するときは情報をパッと見で「これ系だな」にしてはいけないし,デモがあれば少しでも触れて,作品それぞれと向き合わなければいけないと思います。
 そういう意味でもこの「シュレディンガーズ・コール」は,やっぱり言葉ではなく「1章まるまる遊べるデモがあるからそれで!」と。メディアの人間としてどうなのか,というのはありますけど(笑)。

林氏:
 お願いします。本当にそこを押してほしいです(笑)。

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※という流れから,インタビュー本編の冒頭につながります


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